人を働かす最も原始的なものは、もしかすると「ムチ」だったのかもしれません。
古代の奴隷たちが鞭(ムチ)で叩かれて、イヤイヤ労働を強要られていた・・・と昔、社会科で学びました。
その次に登場したのがいわゆる「アメ」です。
「アメ」は時代・環境によって形を変えますが、現在で言えばたいてい「お金(報酬)」です。
「アメ」は昔から空腹の者にはかなりの効果があったと思われます。
その次に登場したのは「アメとムチ」という手法です。
つまり、両方を使いつつもタイミングによって微妙に使い分けるというやり方で、長くこのやり方が良い方法だとされてきた感があります。
組織のマネジメント本でも「アメとムチ」の概念はよく出てきます。
確かにある程度は有効だと思います。
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でも、物事にはその真ん中(中庸)があります。私が思うベストなやり方は「アメとアメ無し」です。
アメを与えるわけでもなく、かと言ってムチで叩くわけでもなく、「何も与えないタイミングを取る」・・・というやり方です。
従来の「アメとムチ」というのは、「うまくやったらアメを与える+うまくやらなかったらムチで叩く」・・・です。
「アメとアメ無し」というのは、「うまくやったらアメを与える+うまくやらなかったらアメを与えない(何も与えない)」・・・という概念です。
ムチという「何か」を与えるのではなく、アメであれ、ムチであれ、何であれ、とにかく「何も与えない」ということです。
すると、やったほうは「アメをもらえないということはどこかうまくなかったのだろうな」と気づきます。
ムチで叩かれるわけではないので、特段イヤな気持ちになることはありません。
↑ここが一番大事なポイントだと思います。
そして考えます。どこを直せばいいのだろう?
どうすればアメをもらえるだろうか?・・・と。
試行錯誤が生まれます。試行錯誤の結果うまくいけばそこではじめて「アメをもらえる」わけです。
やるほうにとっては、強制的に何かをさせられたわけでも答えを教えられたわけでもないので、「自分の力で何かを見つけ改善して実現した!」という大きな自信が生まれます。
ここが大きなメリットだと思います。
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必要の反対は不要です。
つまり、「必ず要る」の反対は「(そもそも)要らない」ということです。
ところが、日本語には「不必要」という言葉があります。
「不必要」とは、必要と不要の中間の概念で、「必ず要るわけではない(かと言って必ず要らない、というわけでもない)」・・・という意味合いです。
これと同じで「アメを与える」でも「ムチを与える」でもなく、中間の「アメを与えない(=アメ無し)」という概念を持つことは結構有効だと思います。
マネジメントでは従来型の「アメとムチ」から「アメとアメ無し」という手法に変えて行なうほうが、多くの人の場合において成長する度合いが大きくなると思います。