登山をするとき、山の頂上を10合目とすれば麓(ふもと)の平地を1合目と数えれます。
山は登れば登るほど下を見たときの見晴らしがよくなっていきます。
山の3合目よりは当然7合目にいる人のほうが見晴らしの良いところにいます。
一番いいのは頂上(10合目)ですね。
このとき、7合目にいる人が3合目にいる人に自分の見渡した風景を描写しても伝わるようで伝わりきりません。
3合目にいる人はまだ7合目という場所の経験がない以上、どうしても理解できないところが必ずあります。
7合目にいる人の情感を3合目にいる人にしっかりと伝えるためには、やはりその人に7合目まで登ってもらうしかありません。
つまり、同じ環境に位置してもらうしか本当の意味で理解してもらえないということです。
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会社でも、リーダーの見解を部下に本当に理解してもらうには、部下自身にリーダーと同じ立場になってもらうしかありません。
会議や交渉事で見解が分かれるのは、それぞれの人が位置している環境・立場が異なるからです。
視点が異なり、視界が違うから話がかみ合わないわけです。
同じ位置での見晴らしを見ていないからです。
低い人の見晴らし台を高い人の位置まで引き上げるか、逆に見晴らし台の高い人が低い人と同じレベルまで下がってみないと相互理解が進みません。
見晴らし台の位置が高い人は低い人よりもただ見ている視界が広いだけではなくて、そこに至るまでの経験値を有しているということが大事なところです。
視界の狭い(低い)相手の立場を経て今の位置に立っているので、相手の視界は十分に知っています。
知ったうえで、今の位置から見てどちらが適切かを判断できる特権を持っています。
組織のリーダーはこれが重要なところです。
いけないのは、過去に自分が味わったその狭い視界(低い見晴らし)をすっかり忘れてしまって、すなわち経験を経験値とすることができずに過去の産物として放棄している場合です。
こうしたリーダーの力量はたいしたことがないので、発言や見解には深みがないというか、表面的で本質を突いておらず、得てして失敗する傾向が強いです。
見晴らしの高い位置に立つことも大切ですが、見晴らしの低い位置の経験を経験値に変えて自分の血肉として蓄えておくことが大事なことだと思います。