従前の日本企業の年金と言えば、「確定給付年金」という概念でした。
これは将来に支給する年金額を最初から確定しておいて、そこから逆算して現役時代の年金保険料(掛け金)を決めるものです。
仮に年率5%としたなら、その年率で老後にお金が給付されることがすでに約束されているので、もらう側としては自分の年金額を読みやすく(想定しやすく)、それを見越して生活設計を立てることができました。
企業側としてはその年率が普通に出せているうちは良かったのですが、バブル崩壊後の日本経済下ではそれが難しくなり、かなり重荷になり、ついにはそれ以上の利率をはじけ出せず「逆サヤ」状態となっていきました。
それが意味するのは「(企業側にとっての)赤字の垂れ流し」・・・です。
そこで新たに用いられるようになったのが「確定拠出(型)年金」という発想です。
これは、将来の年金額は確定されておらず、確定されているのは「今出す掛け金の額=拠出する年金保険料」のほうです。
掛け金を自分で決めて拠出し、その資本を会社側ではなく拠出する本人(社員)が自分で運用して老後の受給額として受け取る仕組みです。
上記の例で言えば、会社が5%を保証することはなく、社員本人でいくらでも好きに運用して高い利回りを出してくださいね~といったものです。
自分の責任下で自分で運用する・・・とは、言葉としてはもっともなことで立派なのですが、まさに「言うは易く行なうは難し」です。
非常にクセモノです。
普通の一般人・・・社員たちがそれほど高い利回りで自ら運用をするなんてちょっと考えれば「簡単ではない」と気づけます。
大きな流れで言うと、「会社はもう利回り保証はできないので(←それほど運用することは難しい/専門家だってそこまでの能力がない)、後は自分で運用して高い利回り出してね(←社員本人だったら高い利回りが出せるでしょ?!)」ということです。
論理的に考えて普通の社員がそれを可能とすることはほぼない(だって会社側だってできないのだから)と言えそうですが、でも世のなかの流れはそうした方向に傾き、今日があります。
確定拠出型年金を活用している人は年々増えていると思いますが、あまり自分の遺産運用のスキルを過信しないほうが良いと思います。
もちろん、中には非常に優れた人もいらっしゃると思いますが、でも、そうした人はごく少数だと思います。
確定給付型から確定拠出型に流れが変わったとしても、それとはまったく別のところで自らの資産を増やしていく思考を持つほうがベターかもしれません。
少なくとも、限られたお金(資金)をどこに費やすかの選択肢をそうやって複数持っておくことは大切だと思います。