ここ数年、最低賃金1000円をいつ超えるか?ということがよく言われてきましたがついに今年実現しました。
私が学生のころは時給450円でアルバイトをスタートしましたが、今や東京都では今年の最低賃金は1,113円です。
時給だけで言えばもうとっくに2倍以上になっています。
ところが、私が新卒で就職したときの初任給は今2倍になっているか?と言えばそんなことはありません。
ほとんど同じか、今のほうがちょっとだけ高い程度です。
つまり、サラリーマンの賃金(初任給)は35年前とほぼ同じなのに、アルバイトの最低時給は2倍以上になっている・・・ということです。
2023年もあと3週間ちょっとですから、年末に向けて「自分が働くことができる=仕事がある」ことに感謝しつつ、自分の給料/時給換算などについて少し考えてみるのも悪くないと思います。
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最低賃金を今の1.5倍上げて時給1500円にしたらどうなるか?
時給が上がって、低所得者が減って、みんながハッピーになるのか?
短絡的にそう考えるのは早計かもしれません。
時給が上がると、それを雇う人間(=経営者サイド)はどう考えるのか、つまりビジネスとして成り立たせるために何がどうなるのか・・・などを考えなければいけないからです。
経営者としては、時給1500円にした分の差額を顧客に転嫁する/商品価格を値上げする・・・といったことに意識を向けるハズです。
また、雇用人数の削減をして会社として支払う全体の給与額を以前と同程度に抑える・・・ということも考えられます。
赤字ではやってられないわけですから、同じ仕事を人間以外のロボット(機械)にやってもらうように仕組みを変える・・・という手も考えられます。
ロボットを導入するには追加のコストが掛かり短期的には赤字になるかもしれません。
でも、長い目で見て人間を雇い続けるよりコスト負担が減るとなれば一考の余地が出てきます。
経営者はそうしたことをいつも考えています。
最低時給というのは、コストで言えば「人間<ロボット」という不等式が成り立っているギリギリのところで、ここで時給が50%上がったら不等式が逆になる可能性があるわけです。
つまり低賃金の仕事というのは、時給が安いから人間にやらせているだけであって、ロボットのほうが安くなったら(それはつまり最低賃金が上がったら)人間なんて使わない・・・ということも十分にあり得るわけです。
時給アップに伴う人件費の差額分を顧客に転嫁できない場合に起こりうることです。
そうなると一時的に退職者が増え失業率が上がる恐れもあります。
これは数年前に韓国で実際に起こったことでもあります。
また、商品価格に転嫁するとモノやサービスの値段が上がるわけですから、この場合、低所得者の時給が上がって収入増となっても生活コストも同じように上がってしまい、必ずしも生活がラクになるわけではない・・・という何となく矛盾したことになる恐れもあります。
経済というのはいろんなことが複雑に絡み合って成り立っていますから、必ずしもこうしたらこうなる・・・と言い切ることはできませんが、案外、人が理論的に考えたこととは違うことが起きがちです。
なぜなら、人は感情で動く動物で、その感情は非論理的であることが多くあるからです。
最低賃金が上がることでモノの値段も上がってインフレとなり、そのインフレの加速は時給の上昇よりも急カーブを描くとしたら、今よりも生活が苦しくなる/生活困窮者が増える・・・という未来だって起こり得ます。
これは昨年アメリカで起きたことです。
こうした不都合な未来から目を背けず、環境の変化に自らを適応させ、自分の身は自分で守ることを決意し、併せて自分を成長させることが重要だと思います。