本業が悪化して赤字になってからやおら新規事業をスタートさせるのでは、経営者の判断として遅すぎます。
経営がうまくいっている会社で、新規事業をもし手掛けようとするなら、そのスタート時期は「既存事業がうまくいっているとき」が一番です。
経営資源に余力があるうちに新規事業へのチャレンジをすることが失敗しないための方策の一つになります。
資金的にも時間的にも労働力的にも余裕があるうちに手掛けるのであれば、仮にうまくいかなかったとしても取り返しがつきます。
これが逆に「経営が悪化した段階でスタート」すると、資金的にも時間的にも労働力的にも余裕なく、焦りが生じます。
また、銀行も支援してくれない恐れがあります。
もちろん、100%そうなるのではなく、そうなる恐れが高いだけですが、実際、人は焦ると普段は為し得ないようなおかしなことも何も不思議に思わずに仕出かしてしまうものです。
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次に大切なのは「新規事業をいつまでやるか」です。新規事業をするときに、成功までの期限や予算を決めずに止(と)めどなくやるのはうまくないと思います。
退却時機をあらかじめ自分なりに決めておくことが大事で、たとえば「設備投資はいくらまで/累積赤字はいくらまで/あきらめないで頑張るのはいつまでとする」・・・といったように、後退する時機を定めておくのは必要だと思います。
これら3つを決めないでスタートすると、いつしか新規事業に思い入れが残るようになり、いつまでもダラダラとやり続けていって、現場の社員たちは疲弊し、結局本体が揺らいでしまうことが起こり得ます。
事業を見切るのも経営者の大切な役割であり、一つのリーダーシップの表れだと思います。
スタートするよりも、事業をやめるときの勇気のほうがはるかに大変かもしれません。
でも、経営者はその勇気を持つことが大事ですし、そうしたことの繰り返しで会社は発展していくのだと思います。