19世紀のアメリカでのゴールドラッシュの大騒ぎは、結果として多くの成功者とともに多くの失敗者を生んだと言われています。
普通に考えれば、金(ゴールド)が発見された土地の所有者は大儲けをしたと思えます。
ところが実際はその所有者ジョン・サッターは大金持ちになるどころか、それまで成功しかかっていた人生を逆にズタズタに切り裂かれたそうです。
せっかくのチャンスをうまく活かしきれなかったようです。
ゴールドラッシュ・・・という出来事は一つですが、それをどう捉えるかは人それぞれ(千差万別)ですし、その後にどうに行動するかも人それぞれです(同じく千差万別)。
ゴールド(経済的にきわめて価値が高いもの)の発見というのは一つの出来事ですが、そこから先はいくつも枝分かれしていきます。
直接関係する人々(土地所有者や採鉱者など)に自動的に富を約束するものではありません。
その機会(チャンス)をどう活かすかはそれぞれの人自身にかかっています。
金(ゴールド)発見の意義は「それによって経済条件が大きく変わる」ことであって、関与した人すべてに良いことが必ず起きるわけでもないし、逆に悪いことがあるわけでもないということです。
カルフォルニアで金が発見された・・・というニュースに接した人は、「このニュースを聞いて多くの人がカルフォルニアに押し寄せるだろう。したがって、カルフォルニアはもはや従前の無人の辺境の地ではなくなるな・・・」と考えるべきだったように思います。
多くの人が集まることの第一の帰結は、生活必需物資の需要関係が劇的に変化することです。
人が集まれば「衣食住」の需要は必ず高まります。
→ ゴールドラッシュ時におけるの成功者たちは、「経済条件が大きく変わる」ことの意味を正しく理解し、それに適切に対処した人たちだったようです。
最初の成功者サム・ブラナンは、「多くの人が金採鉱に来るならそのための道具が必要になる」と予測し、それらを買い占め、その後転売して大金持ちになりました。
「金(ゴールド)発見」という情報を、隠そう/秘密にしようとしたのではなく、逆に大いに宣伝して多くの人を呼び込んだわけです。
第二の成功者リーバイ・ストラウスは、採掘者が求めている衣類=丈夫なズボンを正しく把握し、新しくジーンズを発明して大金持ちになりました。
第三の成功者ウェルズとファーゴは、モノではなく輸送や送金・通信などのサービスに着目しました。
彼ら成功者に共通して言えることは、「金(ゴールド)を掘りに行かなかったこと」です。
その他大勢・皆と同じことはしなかった。
そして、「金を掘らずに金を掘る人を掘った」・・・。
皮肉的な話ですが、ここに重要なヒントが隠されているように思います。