
米スタンフォード大学の心理学者のキャロン・ドゥエック氏による小学5年生400人を対象にした実験にこんなのがあります。
◆子どもたちを2グループに分け、それぞれ図形パズルを用いた簡単なテストを受けさせました。
その後一人ずつ呼び出し、片方のグループの子どもには成績に関わらず「90点だったよ、君は頭がいいんだね!」とその賢さを褒めました。
もう一方のグループの子どもには、同じく「90点だったよ」と褒め、併せて「一生懸命頑張ったんだね!」とその努力を褒めました。
■次の実験
次に、子どもたちに2種類の新しいパズルを示し、好きなほうを選んでもらいました。
一つは前回と同様に簡単なもので、もう一つは難度の高いものです。
すると、そこで面白い現象が起きました。
(前者のほうの)賢さを褒められた子どもの多くが「簡単な問題」を選んだのに対して、(後者のほうの)努力を褒められた子どもの大半は「難しい問題」を選んだそうです。
これは何を意味するのか?
賢さを褒められた子どもは、「賢い」という評価を守るために「間違うことを恐れ」、易しい問題を選んだ・・・。
努力を褒められた子どもは、「努力を更に認めてもらおう」と難題に挑んだ・・・。
■続きの実験
この実験には続きがあるそうです。
子どもたちに他の子の答案を見せました。
このとき、「自分より成績が良かった人の答案を見るか」、それとも「自分より成績が悪かった人の答案を見るか」を子どもに選ばせた。
すると、賢さを褒められた子どもはほぼ全員が後者(自分より成績の悪い人の答案)を選んだのに対して、努力を褒められた子どもは前者(自分より成績の良かった人の答案)を選ぶ傾向が顕著に現れたそうです。
何が言えるのか?
賢さを称賛されると、自分より成績の低い者を見つけて自尊心を守ろうとする・・・。
努力を評価されると、自分の間違いを積極的に見つけて学びを得ようとする・・・。
この結果、努力を褒められたグループは、最終的に図形パズルの成績が約30%伸びたのに対して、賢さを褒められたグループは逆に約20%下がってしまった・・・そうです。
■まとめ
この実験結果が示すのは、人は褒められると嬉しくなる生き物ですが、「何を褒めるかによって、その後の結果は大きく変わる」ということです。
また、「褒める対象は素質ではなく、努力のほうにあり!」・・・と言えそうです。
親も上司も、ともすれば「結果」を褒めがちですが、結果云々に関係なく「そこに至るまでの努力・プロセス」を意識して褒めたほうが後々有効になると言えそうです。