人間には「何かを新たに得るよりも、何かを失うことへの不安のほうが行動に駆り立てられる」・・・という特質があります。
手に入れる嬉しさより、失う心配のほうが大きい(影響を与える)というわけです。
そうしたことを踏まえて考えると、たとえば交通標語では単純に「交通安全を心がけましょう」とか「スピード順守!」という標語よりも、もっとズバッ!と切り込んで「スピードを落とせ!さもなくば違反キップで減点処分!罰金を払わせるぞ!逮捕だぞ!」などとあったほうがドキッ!として、スピードを落とすと思います。
デパートのバーゲンセールでも「この商品はあと5点しかありません、お買い求めはお早めに!」とか、「タイムセールのため、あと10分でこの価格での提供は終了となります」としたほうが、急いで買わなくっちゃ・・・という気持ちになります。
何かを失ってしまうことへの不安は、たとえそれが商品を購入する機会を失うだけのことであっても、けっこう強烈に人の心を動かすわけです。
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営業の仕事では販売数量によってインセンティブがつくケースがあります。
インセンティブとは特別ボーナスみたいなものですから、当然ないよりはあったほうが嬉しいし、営業マンもモチベーションは上がります。
ところが、言ってみれば別にインセンティブというプラスがなくても給料は別途しっかりもらえるとすれば営業マン(サラリーマン)は生活に困ることがないわけです。
したがって、何が何でもインセンティブを得なければいけない!=その数量を販売しなければいけない!・・・と心底から思えなかったりします。
すると、経営者は「せっかくインセンティブをつけているのに思ったほど営業成績が伸びない」・・・と嘆きます。
そんなときの手はこうです。
これは必ずしも良手ではありませんが、そうした場合に「今週中に○○個販売できなければクビだ/降格だ/減給だ!」と言われると、営業マンは目の色を変えて働きます。
何がしかのインセンティブ(金銭)を手に入れることよりも、職・給料を失ったり減らされることの恐怖のほうが大きいからです。
こういう表現は大きな力があるので、リーダーは適切に使うことが大切です。
効果あるマネジメントを行うには「何かを失ってしまう危機感」を上手に煽ることがコツだと思います。