2019年3月期決算の上場企業の役員で1億円以上の報酬を受け取った人は275社の564人に上り、前年の240社538人を上回って過去最多になったそうです。
こうした情報開示は、私が現役時代の2010年から上場企業に義務付けられるようになりましたが、10年経って1億円以上の報酬をもらっている役員が約2倍にもなっているとは、いやはや何とも一部では景気の良いことで・・・・・・と思います。
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夏目漱石が職業作家として執筆した第1作目の作品で、漱石が一字一句にまで腐心して書いたという『虞美人草(ぐびじんそう)』という小説があります。
その中にこんな言葉があります。
「ある人は十銭をもって 一円の十分の一と解釈する。
ある人は十銭をもって 一銭の十倍と解釈する。
同じ言葉(=十銭)が人によって高くも低くもなる」
「出来事・物事は一つ、とらえ方はさまざま・・・を言い表していると言えます。
現金10万円が財布に入っている人から見れば「現金1万円は十分の一」ですが、
現金1000円が財布に入っている人から見れば「現金1万円は10倍」に映ります。
漱石のこの言葉・考え方は、幸せというのは決して「金額の多寡」で計れるものではなく、個々人の今置かれている環境、価値観、物事のとらえ方などから生じる「主観」によって異なってくることを示していると思います。
ヒラ社員から見れば、社長の年収1億円は俺の30倍以上もある!と羨望の的ですが、社長自身からすれば他の会社の社長の数分の1しかもらっていない、となるかもしれません。
1億円というお金の多寡は、受け取る人の主観によって多くも少なくもなるものです。
同じ「〇〇円」という言葉が人によって高くも低くもなる・・・・・・これはお金に限らず、どんなことにも言える大切な概念だと思います。