こんな中国の昔話があります。
その昔、楚の国のある男が舟に乗って川を下っていた。
彼はついうっかりして、持っていた剣を水の中に落としてしまった。
「ポチャン・・・!」
剣はみるみるうちに川の底に沈んで見えなくなってしまった。
彼は大慌てして懐から小刀を取り出すと、剣を落とした船縁(ふなべり)に印を刻んだ。
船縁なんかに印を刻んでどうするんだ?とその舟に一緒に乗っていた仲間が尋ねると、彼はこう言った。
『俺の剣はここから落ちただろ?だから、ここに印をつけておけば剣のありかがわかるって寸法さ!舟が止まったら後でこの下を探せばいいのさ』
彼は得意げにそう語ったが、そう話している間にも舟はドンドン川下へと下っていった。
もはや剣がどこに沈んだのか誰にもわからなくなっていた。
– 「中国古代寓話集」(後藤基巳) –
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冷静に考えれば、この男の言っていることが非論理的で支離滅裂であることがわかります。
でも、話している男はいたって自分が正しいと思い込んでいるようです。
こんな事例は現代社会においても意外と少なくないかもしれません。
例えば、過去の自分の成功法に固執して時代の流れに逆らい、その結果世間から消えていったという人も多くいます。
時代は常に変化しています。
舟が川を下っているという流れ(変化)を無視して印を刻み付けても無意味です。
「机と椅子」のセットが当たり前だった会社も、昨今では「机はあるけど椅子はない」という方向に向かっているところがあります。
「パソコンで処理」していたのに、いつにしか「スマホで十分」という時代になりつつあります。
そもそも「スマホ」だってかつては「ガラケー」が主流だったものです。
もはやガラケーは消えゆく道具の一つです。
イノベーションが起きて過去のビジネスモデルが変わる/なくなることは当たり前のことです。
だから、私たちも一歩先二歩先を考えて自分を変化させる用意を忘れてはいけないですね。
変化がある中でその変化に逆らっても無意味です。
自分の居場所/仕事をする立場が日々変化していることに気づいて、過去に固執することなく柔軟に発想を切り替えることが大切だと思います。