日本人はお金を貯金して後生大事に貯め込んだまま死んでいく・・・と揶揄されることがよくあります。
根底にあるのは「使ったら損する」という考え方かもしれません。
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今から200年ほど前、日本にはサムライという人々がいて、彼らは人殺しの道具として刀を身に付けていました。
ひとたび刀を抜いたら、相手を斬って殺すか、自分が斬られて死ぬかのどちらかになる・・・わけで、場合によっては相手を殺してもその後に自分の切腹もあり得るので、サムライたちは極力、如何にして刀を抜かずに争い事を鎮めるか/勝負を決めるかを考えていた・・・とも言われます。
刀は「使ったら損する」ものの一つだったのかもしれません。
勝海舟なんて刀の鯉口を紙縒りで綴じていたそうですから、まさに「いかにして使わないでおくか」・・・です。
「使ったら損」の価値観が見て取れます。
ところが欧米人は「持っているなら使わなきゃ損だ」と考える傾向が強く、「使わなくて済むのなら初めから持たなきゃ良いでしょ」・・・といった価値観が根付いています。
そしてこの考え方の違いはビジネスの場でも現れます。
例えばアメリカでは資本は道具と考え、これを如何に有効的に使い倒すか・・・という観点で発想します。
日本では使いもしないで内部留保をしてとっておくのが好きなようで、表面的には「いずれ、何かあったときの備えとして」とは言いますが、その実、真剣に考えての行動をとっているとは思えません。
最近は弱まってきましたが、「株の持ち合い」というのも日本独特の珍現象で、もっと直接リターンを求めるお金の使い方があるはずなのにわざわざ効率悪いやり方で資本を眠らせておくのが日本流でした。
これは人材に対するとらえ方にも出ていて、アメリカでは入社してから如何に短期間で成果をあげて貢献してもらえるかを考えますが、日本では鷹揚にほったらかしたままで知らんぷり・・・だったりします。
「使わないと損する」は、アングロサクソンを中心とした価値観で、「使ったら損する」はズバリ日本人的価値観といっても過言ではないような気がします。
どっちが良い・悪いではなく、時と場合に応じて自分なりに考えて使い分けるくらいの意識を持っていることが大切だと思います。
日本人は欧米には無い「もったいない」という概念を持っている民族ですから、「使ったら損する」というのもそうした背景があってこそなのだと思います。
使わずに、持っているだけで、場合によってはチラリと見せることでその威力を発揮させる・・・これはまさに核兵器と同じです。
お金についても改めて「使わないと損/使ったら損」のどっちなのかを自分でよくよく考えて上手にやりくりしていくことが大事になっていくと思います。