歴史小説家の司馬遼太郎は、「精神体質」という言葉を用いて自らのデビュー当時を次のように語っています。
「おかしなことですけれども、小説好きの少年期を送っていながら、私には好きな作家や熟読した作品というものがありませんでした。ある時、開きなおって、好きな作家があれば小説などという面倒なものを書かなくても読み手にまわればよく、わざわざ小説を書くのは自分が最初の読者になるためのものだ、小説を書く目的はそれだけに尽きる、とおもうようになりました。
このことは、いまでも変わりません。
自分が読みたいものを書く、つまり自分に似た精神体質の人が、一億人の日本語人口のなかに二、三千人はいるだろう、自分およびその人たちを読者にしていけばいい、それ以外の読者を考えない、と思い、そこからハミ出すまいとおもっています。
もっとも、べつに道楽がありませんからね、小説を書くことが趣味だとおもうように自分に言いきかせていました」
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彼の考え方はビジネスにも当てはまると思います。
「自分が読みたいものを書く」という件(くだり)を、たとえば飲食業界なら「自分が食べたいものを作る」とし、モノづくりやサービス業界であれば「自分が使いたいものを作る/提供する」といったようにすれば良いだけです。
自分によく似た気質や嗜好をもった人が日本全国1.2億人のうち何千人か何万人はいるだろう・・・そこをターゲットにビジネスすれば良い、という考え方です。
さらには、インターネットの普及で対象を日本から全世界にまで広げて考えればその対象人数はもっと多くなります。
個の時代は個性が売れる・・・と思えば、逆に個の時代は個性がないと売れない・・・とも言えるかもしれません。
個性を売る方法はいろいろあります。
20年前まではホームページがやっとでしたし、その後になってメルマガという手法が生まれてきましたが、今ではSNSの普及も相まって自分・自社を発信する手立てはかなり多岐にわたるようになりました。
Twitter、YouTube、Podcast、Facebook、TikTok、Clubhouseなど手段はさまざまあります。
PCだけではなく、スマホ、タブレット、VR、Apple Watch、といった端末もあります。
活字でなくイラストでも音声でも映像でも可能です。
また、ネットでは結果が短期でわかりやすく、そのため反応が薄い(ない)と思えばすぐに別の手立てを講じることができます。
撤退と推進が以前よりかなりやりやすくなったわけです。
市場が敏感に反応するまで売り物に磨きをかけていけばどこかで好反応を得ることができると思います。
旧態依然としたやり方や考え方に囚われない柔軟な発想ができる人ほどこれからは活躍できると思います。