花の咲かない冬の日は、下へ下へと根を伸ばせ・・・という言葉がありますが、言い得て妙な考え方だと思います。
受験で、無理して難解問題を解こうとせず、自分がすぐに解答できる問題を先に手を付けることと似ています。
結果的にはこのほうが上手くいきます。
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人生は決して平坦ではなく、思わぬ不幸や災難に見舞われたり、評価もされず恵まれることなく不遇な時期を過ごす・・・といったときが得てしてあるものです。
そんな「花の咲かない冬の日」にこそ下へ下へと根を深くはっていき、後に咲く大輪の花につなげていきたいものです。
自由が少ない不遇な環境にあっては、それを嘆いて何もしないのではなく、さっさと気持ちを切り替えて己を磨く良い場だと解釈し、後に羽ばたくためのきっかけの時間としたほうがベターです。
ニュートンもそうでした。
ペストの流行でケンブリッジ大学が休校となり、2年間を郊外の実家に戻って過ごし、その間にかの有名な「万有引力の法則」を発見したそうです。
ニュートンは、後にこのペストによる休校期間を「創造的休暇」と呼んでいます。
宮本武蔵もそんな一人です。
武蔵には18歳から21歳まで3年もの間、書物の積まれた「開かずの間に幽閉された」という経歴があるそうです。
幽閉された武蔵に沢庵和尚がこう諭します。
「この暗黒の一室を母の胎内と思い、生まれ出る支度をしておくがよい。肉眼で見れば、ここはただ暗い開かずの間だが、よく見よ、よく思え。ここには和漢のあらゆる聖賢が文化へささげた光明が詰まっている。ここを暗黒蔵として住むのも、光明蔵として暮らすのも、ただおぬしの心にある」・・・と。
何もできず、いつ終わるかもしれぬ絶望的な環境下で、武蔵は和漢の書に没頭し、ひたすら己と3年間向き合ったわけで、その経験が私たちの知る宮本武蔵を生んだと言えます。
明治の政治家、陸奥宗光も5年にわたって山形県の監獄で禁固刑を受けました。
彼は「毎朝8時ころより夜は12時まで努めて本を読んでいる。一日も怠ることはない」との猛勉強を行ない、後に日本外交の父と評される外務大臣になりました。
窮すれば転ず、転ずれば通ず・・・です。
自分の置かれている今の環境を敵視するのではなく、それを受け入れ、認め、そこから発展させて自分の将来の糧として意味づけをする姿勢があれば、人生はもっと面白くなると思います。