証券会社に勤務していた頃、私は毎朝新聞7紙に目を通し、夜も海外の為替や株式市場の動向に気を配り、仕事が休みの日でも最低限世界の金融マーケットの情報を得ていました。
自分の感性を常に最前線に置き続けていたわけです。
もし、金融マーケットを揺るがすような大きな出来事が夜に生じた場合、翌朝、東京マ―ケットが開いたらすぐに対応できるようにいつも臨戦態勢でいられるように心がけていました。
当時の証券会社というのは、それをできない人は淘汰され、業績をあげることができず、必然的に収入も少なくなっていくことが宿命づけられている職場だったように思います。
仮に、自分が寝ている間に「アメリカの大統領が暗殺された」・・・なんていう噂が流れただけでも市場は大きく反応しますから、翌朝目を覚ましたときには既に大きなうねりが起きています。
噂が本当かどうかわからなくても、株の売買や為替の売買に携わっている者にとっては、まずは何らかの行動を取ることが重要になります。
デマだったらすぐに落ち着くだろう・・・と、安易に考えて何もしないでいるのはうまくない行動パターンです。
たとえば、1981年3月30日、当時のロナルド・レーガン/アメリカ大統領が銃撃を受けた時、為替レートはドル円で211円台から一気に203円台に急落しました。
レーガン大統領の銃撃事件では、手術の成功ニュースが流れたことで、結果的に為替レートは元の水準まで戻りましたが、それまでは乱高下を繰り返してボラティリティーが大きく広がっていました。
噂やデマであっても、マーケットを大きく揺さぶります。
投機においては緊急情報にマーケットが左右され、人間も右往左往してしまいがちです。
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でも、「投資」においてはそうした「緊急情報に一喜一憂する」必要がありません。
たとえば、何か事件が起きたり、誰かに不測の事態が生じた際には、「価格変動」は起きるかもしれませんが、即座に派生利益に変動が起きることはありません。
地震が起きたとき、不動産の価格には大きな変動を招くかもしれませんが、「家賃が乱高下する」ようなことはありません。
まして、噂やデマならなおさらです。
だから、投資では24時間情報監視をする必要もなければ、情報に振り回されることもありません。
投資では、投機ほどハラハラして常時情報収集に躍起になる必要がないので、いつも気がラクで平常心でいられます。
投機は緊急情報に左右され、投資は緊急情報に左右されない・・・というのも、投資を行なう一つのメリットだと思います。